前回の記事で、青少年/更生保護のNPOのBBS会について紹介しましたが、実は私は茨城県BBS連盟という茨城県支部の会長をしています。
※詳しくは、こちらのBBSの活動の紹介をご覧ください。
その私が現在、茨城県内の大学生と取り組んでいるオンライン学習支援活動「For everyone study」というプロジェクトについて紹介していきたいと思います。
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目次
1.活動経緯
1-1 オンライン学習支援活動の発端と構想
2020年5月上旬
茨城県BBS連盟の総会をLINE通話を活用して行いました。私たち茨城県BBS連盟は、毎年9月頭にサマーキャンプ、11月下旬にディキャンプ、3月にはスポーツ交流会といったグループワーク活動等を保護観察所と協力して行っています。
しかし、2020年初頭から発生したCOVID-19の影響により、今年3月に開催予定だったスポーツ交流会等は中止、普段対面で行っていた通常総会もLINE通話を活用して行いました。
3月に開催しているスポーツ交流会は、新2年生が年始から準備してくださっていたことから中止の判断をするのは苦渋な判断でした。
5月の総会時点で、今年中にCOVID-19が収束する可能性は低いと考え、学生たちが企画をしてくれたグループワーク活動を中止してしまうことを考えると、年内は最初からグループワーク活動等をせずに、オンラインで行うことが出来る活動計画したほうが学生たちのためになると考えていました。
茨城県BBS連盟の総会から数日後、私が所属している合同会社J-doc companyの代表から
「今度、千葉県鎌ケ谷市でオンライン学習支援活動を始めるから、講師枠に入れといたから」
という連絡を受けました。
かみ砕くと、代表がプロジェクトマネージャーとして仕事をしている鎌ヶ谷市のNPOが、オンライン学習支援活動を始める際に、講師として教えられる人を探していたため、自分を推薦してくれたということです。
このオンライン学習支援活動を茨城県BBS連盟でできないかなということを思いつき、会員の大学生たちで興味がある学生を公募してみました。
すると、約7名ほどの学生が協力してくれるということで、オンライン学習支援活動を茨城県BBS連盟で行おうとしました。
1-2 「For everyone study」というプロジェクトチーム設立の経緯
2020年6月上旬
茨城県BBS連盟として、このオンライン学習支援プロジェクトを行おうとしました。
このプロジェクトの当初からあった懸念は、支援した子供からお金をもらうかもらわないかでした。
私たちはボランティアで参加しているので、無償性(お金をもらうことを目的にはしない)という原則があり、無料での支援を考えました。
しかし、筑波大学などに在学している学生たちの多くは、下宿していることから実際に1時間の支援を行う際に、Wifiの通信費(ほかにもミーティングなどでかかる経費)とZOOMというアプリの有料版を購入した経費分を、財源の少ない茨城県BBS連盟は負担することが難しいと判断しました。
また、無償で行うことで、責任が問われなくなり、支援活動自体が緩くなって、しっかりした支援を行う可能性を考えた際に、学生たちと相談の上、1回1時間当たり800円をいただき、そこからZOOMの有料会員分の返還額(200円)を除いて、600円分を経費として学生たちに払う仕組みを取ろうとしました。
私たちは保護観察所という組織と連携していることから、このプロジェクトを保護観察所の担当官に相談しました。
しかし、相談した観察官がNPO法人とNPOの違い、ボランティアというものは個人を指すことなどがよくわからず、電話越しで話をした際に、経費として払う形をとるという部分を、「学生に報酬を分配する」という認識をしてしまい、「有償で行うならば別の手段を取らないといけない」という話を言われました。
このままBBSとして継続していっても、同じように認識や監察官の偏見で指摘を受けるのならば、別の方法で行おうということで、BBSを経由しての支援活動ではなく、経費分は親御さんから会員に対して支払う流れを取ることにしました。
BBSとしては、無料で仲介を行い、お金のやり取りに関しては干渉しないという形をとるになりました。
同時に、私が普段フリーランスのファシリテーターとして茨城県内で動いていることもあり、まずはどのような流れになるのか把握するために、私の知人でお子さんのいる方で協力してくれそうな方にお話をして、支援を受けていただけないかの相談をしていきました。
その方は私が現在参画しているNPO法人T-knitのイベントに来てくださる方で、昨年度茨城県で行われた「孤立0プロジェクト」のイベントで知り合った方でした。
事情を話すと、その方は喜んで協力してくださるということになり、その次の週にZOOMで大学生とマッチングを行いました。
翌週、日本BBS連盟の幹部と話をしていると、この活動を学生への労働の斡旋という指摘を受けました。
「なるほど...そういう指摘が出てくるのか」
ということで、BBSという名前は使わず、別のNPOを仲介して行おうという形になりました。
そして、今回私が大学生につないでいた親御さんたちは、 「かさま不登校ネットワークall-unique 」という団体に所属している方が多かったので、この事態を相談し、大学生たちと対話を重ねた結果、大学生のほうで考えてくれた「For everyone study」というプロジェクトチームとして、自分が大学生と親御さん(不登校のお子さん)をつなぐ役割になることになりました。
子どもたちが学校に行けなくなった理由はそれぞれ異なりますので、デリケートに扱わねばならない部分です。
2.活動の目的
自分たちのBBS会としての活動がない状態から始まったこのプロジェクトですが、オンライン学習支援活動を重ねるうちに、私たちは構想当初から見えていた課題と新しく見えてきた課題の二つの社会課題に対応していることが見えてきました。
2-1 学習格差のサポート
元々、自分の合同会社の代表に千葉県鎌ヶ谷市でのNPOのオンライン学習支援活動の話を聞いた時には、この活動の目的は、学習格差だと認識していました。
COVID-19の影響により、学校に行くことが難しくなり、休校が続きました。
その結果、学校外で子どもたちの中で自主的に学習に取り組むことが出来る学習の習慣がついている子と、学校外で学習の習慣が身についていない子で、勉強ができるできないという格差が出来てきてしまうという課題に対して、BBS会として携わることは有用だと思い、このプロジェクトを立ち上げていきました。
しかし、オンライン学習を通して、新しく別の社会課題にも対応することができるのではないかと考えるようになりました。
2-2 斜めの関係性のコミュニケーション
平成時代、IT技術の進歩や働き方により、地域コミュニティの希薄化が顕在的になってきました。
多くの人が休みの日が土日になり、IT技術の進歩で、自分の関心のある事柄やエンターテインメントに直接インターネットを活用してアクセスすることが出来るようになりました。
昭和時代以前には残っていた自分の近所の人との交流などが少なくなり、地元も伝統行事なども少しずつその担い手が少なくなってきました。
昭和時代などはインターネット等はそこまで発展していなかったからこそ、自分の住んでいる地域の行事ごとに参加するのが当たり前でしたが、今ではその行事に参加しないでも家でゲームをプレイしたり、アニメを見たりできるという数多くの選択肢が出てきたからです。
その結果、地域コミュニティが少しずつ瓦解して、多くの人々は自分の地域に関心を持たず、自分の好きなことに関心を向けるようになりました。
子どもたちも自分の近所のおばあちゃん、おじいちゃん、お兄さん、お姉さんとかかわる機会が減ったことで、「自分もこんな大人になりたい」という憧れを抱きにくく、Youtubeで活動しているYoutuberなどのほうが子どもたちにとっては親しみある存在になりました。
私たちは、家族や先生、学校での同級生以外の関係の斜めの関係性のコミュニケーションをオンライン学習支援活動を通して、育んでいければと考えています。
勉強するだけではなく、大学生たちの生活や考え方に触れることで、子どもたちのあこがれになり、その結果、彼らにビジョンを示すことが出来たらと思って、自分は活動しています。
3.現在の活動状況
3-1 活動状況
現在、私たちは、かさま不登校ネットワークの親御さんと茨城県内の大学生をつないで、3名の学生の支援活動を行っています。
大学生と保護者がLINEやFacebookのメッセンジャーで、活動開始前にZOOMのURLを送り、親御さんのほうでPCで入っていただき、そこでオンライン教材を活用しながら、活動を行っています。
現在は、最初の3回の支援は、無料で行い、4回目以降からは経費分(5回貯まったら)の大学生の口座に振り込んでもらおうという体制を構想しています。
3-2 コミュニケーションと学習支援
構想してから約2か月で、不登校の親御さんたちと接して、このオンライン学習支援活動で期待することが
「年が近いお兄さんやお姉さんと、自分の子どもがコミュニケーションを取ってほしい。」 「学校でわからないことや授業で疑問に思ったことも教えてほしい。」という二つに分けることができると思いました。
子どもたちも年が近いお兄さんやお姉さんとオンラインでもコミュニケーションを取る機会があることで、学習以外にも期待できる効果があることにうれしさを感じました。
現在、支援を受けてくださっている親御さんの一人がこのような記事を書いてくださいました。
3-3 週に一度の定期ミーティング
このプロジェクトの最初は、自分が学生たちに声をかけて、ミーティングを招集することがほとんどだったのですが、プロジェクトが進むにつれて、
「毎回不定期にミーティングをする際に、学生たちを呼びつけるのが大変だ~」
と思った僕は、学生たちに相談をして、この不定期ミーティングを呼びつけるのが少し面倒くさいと思うようになったことを伝えた結果、当初の予定通り”週に1度のミーティング”をする時間を取ることを決めました。
現在は、土曜日の朝8時~9時までを目安に定期ミーティングをして、各支援の状況報告、作成中のロゴやFacebookページ、自分のほうで動いてきた案件や連絡を情報交換する時間を取っています。
正直、このミーティングが定例化したことで、自分としてはすごく心理的な負担が解消されました。
3-4 大学との連携の準備
今後、支援を受けたい方が増加してきた際に、フォローできるようにするために、今関わってくれる学生たちに、自分の大学の中で、協力してくれる人を集める手段はないかという相談をしてみました。
その結果、筑波大学では、「T-act」という筑波大学の学生が立ち上げたプロジェクトを公募できるシステム。
常磐大学では、地域連携センターが行っている「学生プロジェクト」というものがあることを調べてくれて、現在関わってくれる学生たちに協力してもらい、二つの大学へ申請を出す準備をしています。
3-5 学習内容
私たちがオンライン学習支援活動を行う上で扱う内容は、ネットレというインターネットブラウザ上で利用可能なオンライン学習の教材を活用しています。
ネットレという教材は、学習内容がしっかりしているために、各学年で抑えなければならない内容が分かりやすく網羅されており、自分の学年以上や自分の学年以下のものも学ぶことが出来るので、学習の進度を受講する側で制御できるのは魅力的です。
4.このプロジェクトに関する課題(7月29日現在)
4-1 コーディネートができる人材が自分のみ
私が現在抱えている一番の課題は、大学生と親御さんのコーディネートを行うのが、自分しか行っていないということです。
私自身は、このオンライン学習支援活動は「見返りを求めず、やりたいからやる」という気持ちで回しているのですが、自分の仕事が忙しくなると、コーディネートを行うことができないという課題です。
一緒にBBSの時から協力してくれる大学生に、サポートしてもらったりして、このプロジェクトが継続的になるような形にしていきたいと思っています。
かさま不登校ネットワークの方からは、僕ではない方がこのコーディネートを行う際に、通信費や連絡調整に時間や気を回さなくてはならないので、そこに対しての対価を払えるような仕組みが必要だという指摘をいただいたので、後輩を育てていく過程でこの課題にもむきあっていきたいと思っています。
4-2 ニーズの把握
親御さんと実際に支援を受ける子供のニーズが齟齬があり、マッチングがうまくいかなかったことが2回ありました。
ここはコーディネートしていくうえで、注意しなくてはならないことで事前にニーズ把握をうまく行って、連絡できるかが課題だと思っています。
今後は事前アンケートなどを取って、この部分を解決していきたいです。
5-3 親御さんのオンライン機材の有無と使えるか使えないか
オンライン学習支援を行う上で、ZOOMを起動させて、ブラウザで教材を起動させる必要があるのですが、その際に感じる必要なパソコンのスペックは
CPU Core i5以上
メモリ8GB以上
カメラあり
のPCが最低条件になるかと思いました。
CPU Core i3 やメモリが4GB のPCだと起動させても、時間が掛かってしまったり、途中で落ちたりしてしまうので、このスペックは必要だと感じました。
また、親御さん自体がZoomを活用できるかできないかも私たちが活動を行う上で懸念することの一つです。
どうしてもこの活動を行う際には、スマートフォンよりもPCのほうがいいのですが、PCにZoomの導入の方法などのレクチャーも行う体制を整えていければと考えています。
ちなみに、7月に千葉県浦安市で行ったZoom講座の動画が、浦安市市民活動センターで配信されているので、それをスマートフォンで観ながら、PCにZoomをインストールしてもいいですね。
5.今後の展開
私としては、上記の課題を解決していきながら、2021年3月までこのプロジェクトは継続して実施していく予定です。
その中で、親御さんや子供たちからニーズがあり、来年度も行ってほしいという話があれば、継続して行っていきたいと考えています。
これから県内の不登校の親御さんや勉強を教えたい大学生とかかわっていく中で、対話を重ねて社会によりよくなる形で貢献していければと思います。